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退職金・役員退職金の平均相場、退職金控除計算・退職金の所得税・住民税の計算方法に関する情報を初心者向きにわかりやすく解説。

◆退職金とは?

 長年勤務していていた会社で定年退職が間近になった時、また会社を自主都合で辞める時などに

「自分の退職金は一体どの程度もらえるのか?」

 もしくは、

「そもそも自分の会社は退職金が出るのだろうか?」

 と、そんな疑問にかられた事のある方は多いのではないじゃろうか。

 日本では退職金制度の存在自体は多くの人が把握しておる。

 しかし、実際に自分自身の退職金額を把握している人が以外に少ないのが実情じゃ。

◆退職金制度は日本独特の制度である

 尚、「日本では…」と述べた理由は、退職金という概念は日本独特の概念であり、日本以外の海外のほとんどの国では退職金制度そのものが存在しない為じゃ。

 現在も尚、世界全体の4分の1近くのGDPをたたき出す経済大国であるアメリカでは、退職金はおろか年功序列という概念も存在しない為、年齢給という考えすら存在しない。

 ビジネスだけでなく、プライベートでも相手の年齢をまず確認するのは日本の年功序列という根強い概念の表れであるとも言われておるように、日本の常識が世界の常識とは限らないという訳じゃな。

◆日本の退職金制度は義務化された制度ではない

 自分が退職する際の退職金や、一般的な平均相場が中々解らない。

 このように退職金制度がどうも解りにくい構造となっておる大きな要因としては退職金制度が「法定された制度ではない」という点が大きな要因ともなっておる。

 日本では当たり前のように馴染み深い制度である退職金制度。

 もし仮に自分の会社が退職金を支給しない会社である事を知ったなら、おそらく誰もが「そんなの違法では?」と思う事じゃろう。

 しかし、退職金制度は企業にとって義務化された制度でもないため、退職金制度を導入してもよし、また導入しなくても法的に罰せられる…⇒続きを見る

◆退職金がない会社が急増(就職前の確認事項)

 退職金は日本独自の制度であり、日本国内においても特に法律によって義務化されている制度でもない。

 この事実を把握すると、勤め人の方としてはやはり、自分の会社の退職金制度が存在するかどうかについて不安になるものじゃ。

 尚、退職金の有無を確認する手段は、会社が就業規則内に設けている「退職金規定」の項が存在するかどうかにかかっておると言ってよいじゃろう。

 もし、現在勤めておる会社の就業規則に退職金規定が設けられておる場合は、退職金制度自体は存在しておる為、退職金規程に記載されている支給内容や支給条件を確認すると良いじゃろう。

 また、会社で退職金規定が設定されていない場合は、残念ながら退職金制度そのものが存在していないと考えられる。

 その為、仮に何年勤めたとしても退職時に退職金が支給されない可能性があるという事になる訳じゃ。

 また、退職金規定どころか就業規則も存在しないような場合は、その会社が生涯を通じて働いていく価値があるかどうかについて早い段階で確認しておくべきじゃろう。

 尚、退職金規定に関する規則を確認する際は各会社の状況によっても異なるが、一般的には社内の総務課に確認するのが通常じゃ。

 もし、就職して間もない場合は、自分の面接を担当した人事課の担当者に確認してみても良いじゃろう。

◆生涯賃金も含めて退職金規定を考える

 退職金と呼ばれる退職者に支払われる金銭は、本質的に考慮すると「賃金の後払い」という性質を持っておる。

 その為、退職金規定の有無は本来、会社に勤める前に確認しておくべき重要な項目であると認識しておく必要があるのじゃ。

 退職金規定が設けられておる企業に勤める場合は、後払いとしての性質をもつ退職金額も含めて生涯賃金を考慮すると、月給が多少低い場合でも生涯賃金では大きくプラスとなる可能性も考えられる。

 また、逆に退職金規定がない場合、その企業に勤める際は、退職時の手当がない分、給与や賞与、そして昇給制度などを考慮し、生涯賃金が妥当であるかどうかを検討すべきと言えるじゃろう。

 就職難と呼ばれる現在では、このような退職金規定まで考慮するゆとりがないというのが実情なのかもしれん。

 しかし、勤め先の選択は一生に関わる重要な選択に関わるケースも多いため、退職金規定の有無を含めて検討する知識を持っておく事も大切なのじゃよ。

◆退職金制度は産業時代の産物

 退職金制度は就業規則内で企業が退職金規定を作成しておるかどうかがポイントとなっておる点はここまでに解説してきたとおりじゃ。

 但し、退職金の有無を考慮する際に事前に把握しておきたいポイントをもうひとつ確認しておくとしよう。

 このもう一つのポイントとは、現在退職金制度の導入を見送る企業や今まで退職金制度を設けていた企業の中で制度を廃止する企業も多く出てきておるという現状についてじゃ。

 元々、法定で定められた制度でもなく、日本国以外ではほとんど導入されていない退職金制度はバブル期の終身雇用制、いわゆる会社が社員の一生を支える概念(退社後も含む)という産業時代の概念が基調となっておる。

 しかし、世界的にグローバル化の波が進む情報時代の現在では、退職金制度は産業時代の産物でしかなく、企業の重荷となってしまう可能性も懸念されておるのじゃ。

◆退職金制度の廃止と選択制の導入

 退職金制度を廃止する流れは特に中小企業で加速的に進んでおるのが実情じゃ。

 企業にとって退職金制度を導入する事は、会社の経営にとって大きなリスクともなり得る。

 その為、大企業と比較すると資本的にも体力の小さな中小企業は制度の充実を図るよりも、リスクを抑え継続的な雇用を維持する事を優先するケースが増えてきていると言っても良いじゃろう。

 尚、東証一部上場企業であっても退職金規定の見直しや「退職金選択制」を導入する企業も少しずつ増加しておる。

 尚、選択制を選んだ場合は給与の後払いの性質を持つ退職金を毎月の給与に上乗せして現役中に退職金相当額を受給できるような仕組みになっておるのじゃ。

 このように現在では大企業であっても退職金の支給について個々に選択権を与える方向に移行する企業…⇒続きを見る

◆役員退職金の平均相場

 ここからは退職金の一般的な平均相場について確認していくとしよう。

 退職金金額の計算は、代表取締役社長や専務などの役員の場合と一般社員の場合では、基本的に計算方法が異なる場合が多くなっておる。

 これは一般的な見解として社長や専務などの取締役役員は会社の経営に対する責任が大きく働き、会社への貢献度も大きいと考えられる為じゃ。

 その為、役員の退職金の計算では、会社への貢献度を示す「功績倍率」と呼ばれる指標を基に退職金の計算がなされるケースが大半となっておる。

 尚、大企業の場合は株主総会などで独自の退職金計算規定を設ける場合もあるのじゃが、中小企業などでは功績倍率を基に退職金計算が行われるケースが圧倒的に多くなっておるのが現状じゃ。

 まず本項では役員退職金の計算方法と平均相場について確認しておこう。

◆役員の功績倍率の平均相場(参考)

 まずは功績倍率を用いて役員退職金の計算を行う場合の一般的な相場について確認じゃ。

 功績倍率の設定に関する具体的な決まりは一切決められておらん。

 その為、ここで紹介する功績倍率は過去の役員退職金として損金計上が認められた退職金判例基準などを基にした統計的な功績倍率の相場である点を把握した上で、功績倍率の平均的な目安として確認しておくことが重要じゃ。

 尚、役員の功績倍率の平均相場は概ね以下のようになっておる。

【役員の功績倍率の平均相場】
◆代表取締役(創業者)⇒3.0倍〜3.4倍
◆代表取締役⇒2.4倍〜3.2倍
◆専務取締役⇒2.2倍〜2.7倍
◆常務取締役⇒2.0倍〜2.6倍
◆取締役⇒1.2倍〜2.0倍
◆取締役(監査役)⇒1.0倍〜1.6倍

 上記の役員の功績倍率の平均相場を見ても解る通り役員の功績倍率については、社長、専務、常務、平取締役の順で功績倍率が徐々に低くなっておるのが一般的じゃ。

 尚、代表取締役の中でも創業者の場合は、会社を設立した最大の功労者という見解からも会社への貢献度が最も高いとされる事が一般的であり最も高い功績倍率となるケースが大半じゃ。

◆功績倍率を用いた役員退職金の計算式

 役員の功績倍率の平均相場の目安を確認したところで、実際に役員の退職金金額の計算方法についても確認しておく。

 功績倍率を基に役員退職金の計算を行う際の計算式は、役員の最終報酬月額をベースとし、役職の在職年数を乗じて退職金の金額を計算する事になっておる。

 以下に功績倍率を用いた役員退職金の計算式を記載しておくので確認しておく事じゃ。

【功績倍率を用いた役員退職金の計算式】
最終報酬月額×役員勤続年数×功績倍率

 最終報酬月額は退職金の支給を実際に行う年度の最終月額報酬で仮に在任期間が一年に満たないような場合は、報酬額を月割りで計算するのが一般的じゃ。

 尚、役員勤続年数とはその名の通り、役員として勤続している年数の事であり会社の通算勤続年数とは異なっておる点がポイントじゃ。

◆代表取締役の退職金の計算事例

 最後に役員退職金の計算を具体的な事例を基に算出してみるとしよう。

 この事例では中小企業の代表取締役(創業者)の退職金金額を算出する事とする。

【計算事例の条件】
役職⇒代表取締役(創業者)
最終報酬月額⇒240万円
役員勤続年数⇒20年
功績倍率⇒3.0倍

 中小企業の場合は創業者が代表取締役社長として長年在位するケースは珍しい事ではない。

 最終月額報酬240万円、役員勤続年数20年というのも実際に存在しそうな範囲と言えるじゃろう。

 尚、この事例における退職金の計算式は以下の通りじゃ。

※240×20×3=14400

 功績倍率を用いた計算式で退職金を算出した場合、今回の事例における代表取締役社長の退職金は1億4400万円…⇒続きを見る

◆従業員の退職金平均相場

 役員退職金の計算では、功績倍率という会社への貢献度を基に計算する方法が主流となっておる点は前項までに解説してきた通りじゃ。

 では、ここからは会社の従業員(サラリーマン等)の退職金の平均相場についても確認していくとしよう。

 会社の従業員の退職金の平均相場は、各会社が退職金規定で定める金額が基になって計算され支給される事になっておる。

 その為、一概に「幾ら」という金額を把握する事は困難じゃ。

 その為、ここでも一般的な平均相場を基に従業員の退職金金額の目安について確認していく事を事前に把握しておく事が大切じゃ。

◆中退共発表の退職金平均相場

 会社の従業員の退職金の原資を積み立てる制度の中で最も認知度の高い制度のひとつに中小機構の中退共制度と呼ばれておる制度があるのをご存じじゃろうか。

 中退共は退職金制度を導入する会社であればおそらくほとんどの会社が利用している退職金積立制度で、会社にとっては節税を行いながら退職金の積み立てを行う事が可能となる政府が出資している制度じゃ。

 この中退共では退職金の平均相場モデルを大学卒と高校卒に分類し、更に自己都合退職と会社都合退職に分類して退職金モデルを発表しておる。

◆高卒・大卒の退職金平均相場

 ではここからは、具体的に大卒・高卒の退職金平均相場を勤続年数と退職事由別に確認してみるとしよう。

 ここでは会社の規模は50人以下の中小企業を事例とし、退職金金額は解りやすいように幾つかの条件に分類して記載しておくのでチェックしておくことじゃ。

【勤続25年の退職金平均相場】
大卒(自己都合)⇒5,168,000円
高卒(自己都合)⇒4,239,000円
大卒(会社都合)⇒6,120,000円
高卒(会社都合)⇒5,093,000円

 続いて定年時の退職金についても確認じゃ。

 定年は現在は定年延長義務化に基づき65歳定年となっておるが、ここでは60歳定年時の平均相場について記載しておく。

【定年時の退職金平均相場】
大卒⇒11,479,000円
高卒⇒10,273,000円

 定年を60歳と定めた場合、高卒と大卒では勤続年数に4年の違いが生まれる。

 しかし、定年時の退職金相場を見る限り、大卒者の方が退職金支給額が高くなっておる。

 これは、大卒と高卒では退職金支給額についても大卒が有利となっている事を意味しておると考えても良いじゃろう。

◆支給実態から見る退職金相場

 続いて厚生労働省が平成20年に発表した退職金の支給実態調査における学歴別の退職金相場についても確認しておくとしよう。

 比較する条件は勤続年数が35年以上の場合の学歴別の退職金相場じゃ。

 尚、対象とする企業は一部上場等の大企業も含んでおる。

【勤続年数35年以上の退職金相場】
大卒⇒23,350,000円
高卒(管理・事務・技術職)⇒20,010,000円
高卒(現業職)⇒16,930,000円
中卒(現業職)⇒14,790,000円

 この支給実態調査はやや平成19年度の統計データを基に平成20年に公表されたものであり、やや過去の退職金相場となっておるが、大卒と高卒では最大で300万円〜600万円近く退職金支給額が異なっておる点は見逃せないポイントじゃ。

 経済のグローバル化に伴い欧米の実力主義が浸透しつつある日本ではあるが、今も尚、日本独特の年功序列、学歴社会が退職金支給額に色濃く反映しておる結果と言えるじゃろう。

 但し、退職金制度を廃止する企業が急増しておる現在の日本では、実際の退職年齢時まで制度が継続しているかどうかが疑問という方も多いじゃろう。

 退職金制度は税制的にも大きな優遇がなされている制度…⇒続きを見る


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