役員退職金の計算では、功績倍率という会社への貢献度を基に計算する方法が主流となっておる点は前項までに解説してきた通りじゃ。
では、ここからは会社の従業員(サラリーマン等)の退職金の平均相場についても確認していくとしよう。
会社の従業員の退職金の平均相場は、各会社が退職金規定で定める金額が基になって計算され支給される事になっておる。
その為、一概に「幾ら」という金額を把握する事は困難じゃ。
その為、ここでも一般的な平均相場を基に従業員の退職金金額の目安について確認していく事を事前に把握しておく事が大切じゃ。
会社の従業員の退職金の原資を積み立てる制度の中で最も認知度の高い制度のひとつに中小機構の中退共制度と呼ばれておる制度があるのをご存じじゃろうか。
中退共は退職金制度を導入する会社であればおそらくほとんどの会社が利用している退職金積立制度で、会社にとっては節税を行いながら退職金の積み立てを行う事が可能となる政府が出資している制度じゃ。
この中退共では退職金の平均相場モデルを大学卒と高校卒に分類し、更に自己都合退職と会社都合退職に分類して退職金モデルを発表しておる。
ではここからは、具体的に大卒・高卒の退職金平均相場を勤続年数と退職事由別に確認してみるとしよう。
ここでは会社の規模は50人以下の中小企業を事例とし、退職金金額は解りやすいように幾つかの条件に分類して記載しておくのでチェックしておくことじゃ。
【勤続25年の退職金平均相場】
大卒(自己都合)⇒5,168,000円
高卒(自己都合)⇒4,239,000円
大卒(会社都合)⇒6,120,000円
高卒(会社都合)⇒5,093,000円
続いて定年時の退職金についても確認じゃ。
定年は現在は定年延長義務化に基づき65歳定年となっておるが、ここでは60歳定年時の平均相場について記載しておく。
【定年時の退職金平均相場】
大卒⇒11,479,000円
高卒⇒10,273,000円
定年を60歳と定めた場合、高卒と大卒では勤続年数に4年の違いが生まれる。
しかし、定年時の退職金相場を見る限り、大卒者の方が退職金支給額が高くなっておる。
これは、大卒と高卒では退職金支給額についても大卒が有利となっている事を意味しておると考えても良いじゃろう。
続いて厚生労働省が平成20年に発表した退職金の支給実態調査における学歴別の退職金相場についても確認しておくとしよう。
比較する条件は勤続年数が35年以上の場合の学歴別の退職金相場じゃ。
尚、対象とする企業は一部上場等の大企業も含んでおる。
【勤続年数35年以上の退職金相場】
大卒⇒23,350,000円
高卒(管理・事務・技術職)⇒20,010,000円
高卒(現業職)⇒16,930,000円
中卒(現業職)⇒14,790,000円
この支給実態調査は平成19年度の統計データを基に平成20年に公表されたものであり、やや過去の退職金相場となっておるが、大卒と高卒では最大で300万円〜600万円近く退職金支給額が異なっておる点は見逃せないポイントじゃ。
経済のグローバル化に伴い欧米の実力主義が浸透しつつある日本ではあるが、今も尚、日本独特の年功序列、学歴社会が退職金支給額に色濃く反映しておる結果と言えるじゃろう。
但し、退職金制度を廃止する企業が急増しておる現在の日本では、実際の退職年齢時まで制度が継続しているかどうかが疑問という方も多いじゃろう。
尚、こちらも少し昔の情報となるが平成25年11月に厚生労働省が発表した大卒社員の退職金平均支給額はかなり大きく減少し、過去5年間で平均で約15%程度もの減額となった事が報告されておる。
社会保険料の企業負担率の増加や消費税増税、そして65歳定年延長など、企業の負担は増加する一方であるのが企業の現状じゃ。
今後も更なる負担増が予想される中で、法的に支給が義務化されていない退職金制度は優先的に廃止される可能性が高い点も把握しておくと良いじゃろう。
※退職金の平均支給額はここ数年で急激に減額
現実的に退職金制度は税制的にも大きな優遇がなされている魅力的な制度ではある。
しかしこれらのメリットはたったひとつの税制改正で退職金手取り額も大きく変更する可能性もあるため、学歴以上に制度が継続されるかどうかが今後の最重要ポイントとなってくるのかもしれんのぉ。